広島県とコラボレーションしてお届けする新コーナー
【広島県 presents 高校生が聞く!9ジラジシゴトーク】!
このコーナーでは10代に広島県の魅力を知ってもらうために
広島で活躍する大人に高校生がインタビュー!
広島で働く楽しさや、やりがいを教えてもらいました!
今回インタビューしてくれたのは広島県立宮島工業高校 建築科の生徒さん!
そしてゲストにお迎えしたのは建築家の土井一秀(どいかずひで)さんです!

土井さんは広島出身で今も広島に拠点を構えて
全国各地の建造物を設計している建築家で
近畿大学工学部の先生でもあります!
土井さんは色んなものを設計されているんですが、例えば!
大崎上島にある広島叡智学園の校舎と寮を設計されたのは土井さん!
取材の時、寮の模型を持ってきてくださったんですが、
宮島工業のみんなは釘付けでした!


模型は各部屋の間取りまで作られています!
これを作るのに1年かかりそう・・・!
こちらは吉島にある住宅。
模型を基に打ち合わせを重ねてどんな建物にするか話し合います。

さらに土井さんは「ひろしま建築学生チャレンジコンペ」という
全国の建築学生を対象にしたコンペで審査員を務めたことがあります。
このコンペは大学生・専門学生を対象に
公共建築物の設計についてアイデアを募集して、
最優秀作品に選ばれると実際にその建物を造ることになるというコンペで
土井さんは建築業界の未来を担う若者の育成にも関わっていらっしゃいます!
実際に建てるところまでやっている県はなかなかないそうなので、
建築のことを勉強している9ジラーたちも
大学生・専門学生になったらぜひチャレンジしてみてください!
土井さんは何かを作ることに興味があったので、なんとなく工学部に進み、
そのうち建築家の人と仕事をするようになり、なんとなく独立。
その場その場で面白そうな方向に進み、今のお仕事に就かれたそうです。
世界中の建築物を作る土井さんですが、
今も広島を拠点にしているのは"地元"だから!
一度県外に出たことで県内にいると気付けない、
広島の良さにも気付いたそうです。
建築家として第一線で活躍する土井さんに
未来の建築業界を担う宮島工業高校 建築科のみんなから
質問や将来自分が設計してみたいもののお話を聞いてもらいました!

●「水族館の水槽の仕組みってどうなってるんですか?」
建築科にとって"水"はとても難しい。怖い相手です。
50~80cmの専用のアクリル板を使っていて専用の技術がある。
私は水族館ではなく動物園の設計をしたことがありますが、
例えばレッサーパンダだと、
「こういう行動をするので、
見せれるようにするにはこういう設計が必要」など
設計のことだけじゃなく、動物の習性も勉強しないといけないです。
●「少子高齢化の社会なので、将来は高齢者に優しい
段差の少ない家や平屋の家、エレベーター付きの家を建てたい」
相手の立場になって考えることが大事。
対話や思いやりの気持ちが設計では大事になってきます。
私がそういった建物を建てるときに気を付けているのは、
"高齢者"と聞くと杖をついているなどイメージしますが、
自分自身が高齢者と呼ばれる年齢になったときに
果たしてそうなっているかということ。
もちろん杖をついている可能性もありますが、
高齢者と呼ばれる歳になったとき、
すぐに杖をついているわけではないですよね。
年をとっても今と同じように暮らすには
どんな設計が必要かを考えることが大事!

●「みんなで遊べるテーマパークを広島に作りたい。広島が盛り上がると思う!」
遊園地は建築家にとって大きなテーマ。
原っぱと遊園地という本がありますが、
施設を豊かにするとき、
遊園地のようにどれくらい楽しさを演出するか、
原っぱのように遊び方をユーザーに任せて自由に任せるのか・・・
設計するのは難しい!

●世の中の建物を見て、自分ならこうすると思うことはありますか?
思うことも・・・ありますね笑
名作と言われる建物を見て感動するのはとても大切なことです。
建築も漫画や映画などと同じように鑑賞する美術作品の1つだと思います。
海外などへ行ってたくさんのものを見たり、
日本の名作を見て感動する体験をすれば楽しくなる。
自分の好きな建物を見つけられれば
授業も楽しくなるかもしれないですね笑
●依頼を受けて建物が完成するまでどれくらいかかりますか?
建物によってまちまちですが・・・
私の事務所では完成までに丸1年と言っています。
例えば車なら形があるのですぐに買えますが、
建物は形が決まっていない状態、
打ち合わせを重ねてどんなものを建てるか決めていくので
完成までにとても時間がかかります。
半年くらいで建てられると思っている方もいらっしゃるかもしれませんが
それはちょっと待ってください!って感じですね笑
●考えたアイデアが気に入ってもらえないときは悔しいですか?
作っていると我が子のようになっていくので、
愛されてほしい気持ちはもちろんありますが、
自分がいいと思うものと依頼者が必要としているものが違うのは
起こりえることなので仕方ない部分もあります。
そういう時は真摯に受け止めて新しいアイデアを出すようにしています。
短い時間でしたが、たくさんの質問にお答えいただきました!
未来に繋がる時間になったでしょうか?
そして宮島工業高校のみんなには土井さんのお話しを受けて、
「広島にあったらいいなと思う空間」をイラストに描いてもらいました!
さらに土井さんからの一言コメントも寄せていただいています!

犬の絵があるので、ドックランのアイデアでしょうか?
大きな木も書いてあるので、木や動物など、
人間以外の生き物と一緒に生きる場所を設計したいのだと思いました。
人間の影響力が大きくなりすぎてしまったこの地球上で、
どの様に他の生き物と人間が共生するかというテーマは
これから皆さんの世代が真剣に考えなくてはならない問題になると思います。
どのような環境(建物や広場など)だと、
動物や植物が幸せなのかと言う事は、
まだ分からない事がたくさんある分野です。
人間以外の生き物の幸せに寄り添った環境を設計する人になってほしいです。

都市の中に水の柱が立ち上がる姿はとても幻想的になると思います。
朝、昼、夜、夏や冬など、いろいろな季節や時間で水の色が変化して、
美しい景観が作られるのではないかと思います。
人間のためのタワーではなく、
魚など水中で生きる生物のタワーである事が、新しく現代的だと思います。
中空になっているのはなぜでしょうか?
もしかしたら、その中から魚たちを見る人のための場所になるのでしょうか?
そうだとしたら、中空部分から水や魚越しに街を眺める景観が生まれ、
ビルの間を魚が泳いでいるような感じになるかもしれないですね。
これほどの巨大な水圧を受ける透明な物質を
タワー上に組み上げるのは大変な技術だと思いますが、
是非将来実現して欲しいと思います。

空に魚が泳いでいるように見えるのは天井が水槽になっているのでしょうか?
それとも水中にお祭りや商店街が出来る大空間をつくる?
いずれにしても、水を透過した光が落ちてくる、
水の中のような幻想的な空間になり、
それだけでも、多くの人が集まってきそうです。
魚たちが上に居て、人間が下にいるという関係がとても面白く、
水族館では、人間が魚を観察していますが、
ここでは、人間の活動を魚たちが観察しているように見えます。
新しい、自然と人間の関係を創り出す人になってほしいです。

自分の大好きな景色を時を忘れて眺める経験は特別なものです。
海があるだけでなく、そこにベンチがあると、
誰か他の人も同じようにここから海を眺めたのではないかと想像できて、
出会ったことのない人と心が通じるように感じるのではないかと思います。
なんとなく、2人で座るベンチのように見えました。
一人で座るベンチか、二人または三人か、
それぞれの座る距離や方向で、なんとなく、人と人との関係や
その人と見る海の景観の親密さが微妙に変化すると思います。
家具や建築をつくる事は、それにかかわる人の関係や
かけがえのない時間をつくる繊細な作業でもあるので、
将来、景観デザインや家具のデザインを行うデザイナーとして
活躍を期待しています!

高い場所から街を一望できるのはとても特別な体験です。
自分の住んでいる町の全体像を実際に体験する事で、
街を良く知る事ができる特別な場所になると思います。
しかし、一方で、シンボルタワーは
あちこちにみんなが作るとシンボルタワーにならないので、
1棟だけ、または限られた数にする必要があり、
素晴らしい景色を独占する事になるので、
タワーの中が誰にどのように使われるかを考える必要があると思います。
もう一つは、街中の人がずっと長い間、
自分たちの街のシンボルとして見上げる建物になるので
とても美しい建物である必要があります。
美しい建物を描ける建築家になって欲しいと思います。
最後に土井さんからメッセージ!
建築は色んな側面があります。
伝統的な工法、公共事業、都市を作ること、インテリアのこと・・・
全部建築です。
色んな能力が活かせる分野なので、楽しんで学んでほしいと思います。

土井さん、宮島工業高校建築科のみんな、松田先生、
見学で来てくれていた皆さん、この度はありがとうございました!