異世界で音と戯れる――水曜日のカンパネラ「未確認ツアー」

2016.7.10(日)
水曜日のカンパネラ
@HIROSHIMA CLUB QUATTRO
ワンマンライブ 2016“未確認ツアー”

会場が暗転し、スクリーンに映し出されたのは、水曜日のカンパネラの"主演"コムアイの映像。「メデューサ」を歌いながら、クアトロのロビーで踊り回る。スクリーンの映像が、「メデューサ」PVの世界――コムアイが夜中のパルコを駆け回る--――と、脳内で重なる。映像の中でドアが開くと同時に、客席後方のドアが開き、コムアイが登場した。「スクリーンの世界」「PVの世界」が目の前の現実と混じり合い、自分のいる世界がゆらいで、一瞬くらっとする。


そもそも会場内に入ったときから、空気は異質だった。原生林のような装飾、アマゾンのような背景音。スクリーンには未確認生物たちがトレーディングカードになって映し出される。メジャーデビュー版『UMA』の世界である。


歌われる楽曲は "規格外"の連続。まずは、歌詞の世界観。ムダ毛処理をして夏オトコにイメチェンしたい「雪男イエティ」、採血の手順と血液成分の世界を歌い上げる「チュパカブラ」。ラップ調の歌唱も独特。言葉がカテゴリーごとに羅列されたり、言葉の響きが優先されたり。「部屋とYシャツと遣隋使」(「小野妹子」)に至っては、もはや"意味"を考えること自体が無意味。「メッセージ」「意味」「ストーリー」。およそ"歌"に"あるべき"と信じられている要素から解放され、自由に、純粋に音と戯れるその音楽は、メッセージで飽和状態の現代ポップスの世界に風穴をあけるアンチテーゼでもある。それが、"コンセプチュアル"で終わることなく、クオリティの高いサウンドと、カリスマ的パフォーマンスによって、強烈な"エンターテインメント"に昇華されていればこそ、会場に熱狂をもたらす。「手の指の皮が」に「ふやけるね!」と呼応するコール&レスポンスを聴いていると、意味のその先にある無条件の楽しさに、はたと気が付く。


エンターテインメントと言えば、次々と繰り出されるライブ演出はその極致。「フェニックス」では、さなぎのような姿で登場したかと思えば、羽化してフェニックスの姿になり(フェニックスって昆虫だったのか...?)、ハスの花の神輿に乗って客席を練りまわる。「桃太郎」では、ウォーターボールに入って、観客の上を転がりまわる。「みんなが支えてくれないと、機材代の弁償になるからね!」と言ったそばから、天井のスプリンクラーを破壊。つくづく、ハコには収まりきらない。


ワイルドバンチフェスでは、また新しくなった"未確認"の水曜日のカンパネラに出会えるはず。彼女たちの今をこの目と耳で確認すること、それは世界のポップカルチャーにとって重要な瞬間に立ち会うことではないか、そんな気さえしている。

アヴァンギャル度
★★★★★
既存の価値観を揺るがす度
★★★★★
神輿にびっくり度
★★★★☆

ハシゴを使った神輿に乗って、観客の中を練り歩くのはカンパネラ・ライブの定番なんだとか。「次はどんな神輿が見られるか、神輿にも注目してもらったら」バックヤードでそう語ったコムアイさんの笑顔を見てさらに期待が高まったので、★4つ。すっごい、異世界なやつが見たいです。

Written by ushee